「ジーク戦士長が何者か」が分かった
ジークと壁内人類の関係
20巻において、ジークは怒りの感情とともにこう言っている。
哀れだ…歴史の過ちを学んでいないとは…
レイス王によって「世界の記憶」を奪われたのは悲劇だ。だから何度も過ちを繰り返す。
しまいには、壁の中の奴ら全員年寄りから子供まで特攻させるんだろうな…
どうせ、誇り高き死がどうとか言い出すぞ。…発想が貧困でワンパターンな奴らのことだ。
…ふざけやがって。…あ、粉々にしちゃったか…。ハハ…何やってんだ俺。
何、マジになってんだよ?お前は父親とは違うだろ?
何事も楽しまなくちゃ。みんなを誇り高き肉片にしてあげようぜ。
そんなに叫んで➖何の意味があるってんだよ!!
このジークのセリフと感情から垣間見えるのは、完全な敵としての憎しみではなく、学習をしない身内に対する怒りだ。
(なぜ、そう言えるのかについては、もっと踏み込みたかったが、しっくりくるものが浮かんでこなかった。機会があるときに、深ボリしてみたい)
まさしく「同族嫌悪」という言葉がふさわしい。
そう、「ジークと壁内人類は同じ民族」だと、私は考察しているのだ。
ジーク親子とアニ親子
お前は父親とは違うだろ?
ジークのこのセリフから、ジークとジークの父は考え方が大きく異なっていたことが分かる。
父と子のこんな関係性を見て、思い出すのは、アニのこのセリフ。
私の父もあんたらと同じで…何か現実離れした理想に酔いしれてばかりいた…。幼い私は心底くだらないと思いながらも…この無意味な技の習得を強いる父に逆らえなかった…
もし、私の「ジークは、壁内人類と同民族説」が正しければ、ジークもジークの父も『奴隷の血』であり『悪の末裔』ということになる。
アニは、こうも言っている。
あんた(マルロ)は、正しい人だと思う。正しいことを言うから。
大きな流れに逆らうって…とても勇気がいることだから
この他の描写から考えても、アニの父が『大きな流れに逆らう』『正しい人』だったことは容易に想像できる。
ジークの父もこのような人だったのではないだろうか。
ジークの父は、壁外世界において『奴隷の血』とされる中、その大きな流れに逆い、悲劇を迎えた。
一方、ジークは、『奴隷の血』とされる現実を受け入れ、世界の流れに沿う形で戦士長となり、同族を滅ぼそうとしている。
しかし、アニと同じように、どこかで父の信念への尊敬があり、だからこそ、同族の無謀な特攻に対して大きな怒りを覚えるのではないか。
もし、完全に割りきれていれば、この特攻は『悲劇』などではなく、ちゃんちゃらおかしい『喜劇』に過ぎないはず。
ちなみに、エレンととグリシャ、クリスタとロッド、サシャとサシャの父、エルヴィンとエルヴィンの父といった形で、この物語には多くの父子関係が描かれている。
この「父子」もまた、「進撃の巨人」の中で重要なキーワードの1つと言えるだろう。